青矢研究室

テクトニクス研究室

青矢睦月のプロフィール http://pub2.db.tokushima-u.ac.jp/ERD/person/256570/profile-ja.html

研究テーマ:変成岩とテクトニクス-過去の地球で起こった造山運動の解読

変成岩という岩石をご存じでしょうか?マグマが冷え固まってできる火成岩や,地層が固結してできる堆積岩に比べると知名度の低い岩石かもしれません.変成岩はもともと火成岩や堆積岩だった岩石が地下深くの高温・高圧状態に置かれたために,構成鉱物や組織(構造)が「固体のまま」変化した岩石です.

エクロジャイト
図1 地下65kmもの高圧で形成するエクロジャイトという変成岩(愛媛県新居浜市産).赤い粒状の鉱物はガーネット.
青色片岩
図2 徳島県産の青色片岩.地下約30km以深で形成する高圧型変成岩で,藍閃石という鉱物を多く含む.2016年に日本地質学会が「徳島県の石(岩石)」に指定した.

「県の石」四国  http://www.geosociety.jp/name/content0146.html

徳島県北部は,三波川帯という東西800kmに渡って延長する低温高圧型変成帯の上に位置しており,ときにエクロジャイトや青色片岩(図1,2)といった地下30〜65kmもの深さで生じた変成岩も産出します.

三波川帯
図3 西南日本における三波川帯(低温高圧型変成帯)の分布範囲.図5左に示した地図の範囲(1/5万「日比原」と「新居浜」)を赤枠で示している.

地下深くに岩石をもたらすような運動は,プレートとプレートがぶつかり合う場所,つまりプレート収束境界(沈み込み帯,大陸衝突帯:図4)で起こります.つまり,変成岩とは,こういった過去の「造山運動」によって生じた岩石だと言うことができます.ただし,数10kmもの地下深部にあった変成岩が,どのようにして現在の地表にまでもたらされたのか,そのメカニズムは未だ明確とは言えません.

プレート境界
図4 プレート境界の模式図.発散境界(海嶺),横ずれ境界(トランスフォーム断層),及び収束境界(沈み込み帯,大陸衝突帯)があり,造山運動は収束境界で起こる.

私たちの研究室では野外調査や顕微鏡観察,鉱物化学組成分析を通じ,過去の造山運動,特に低温高圧型変成岩の上昇機構を読み解く手がかりを日々探しています.これまでに,三波川帯の上昇に海嶺沈み込みが関与したであろうこと,また上昇過程で変成岩が上盤側のマントル物質(かんらん岩や蛇紋岩といった超苦鉄質岩)をトラップしたこと(図5)などを明らかにしています.

青矢睦月の研究業績 http://pub2.db.tokushima-u.ac.jp/ERD/person/256570/work-ja.html

超苦鉄質岩
図5 左:四国中央部三波川帯におけるマントル物質(超苦鉄質岩)の分布を示した変成分帯図.右:沈み込んだ三波川変成岩と取り込まれたマントル物質のもともとの位置関係.図はともにAoya et al.(2013)に基づく.

近年は,地下40km以上の深さに達したエクロジャイト相変成岩が,徳島周辺では地図上のどこに分布しているのか,またそういった変成岩が過去に辿った温度・圧力の履歴や,変成岩が上昇時に被った変形過程について研究を進めています.

卒業生の主な卒業研究テーマ

  • 高越地域三波川帯の南北断面図とエクロジャイトユニットの分布範囲.
  • 気延山周辺の三波川帯における地質図と変成分帯.
  • 眉山地域の変塩基性岩中の角閃石累帯構造から推測される変成履歴.
  • 高越地域三波川帯における2段階の変形の伸長方向.
  • 眉山地域三波川帯における変形構造方位と主変形の剪断センス.