齋藤研究室

 

堆積学研究室

  • 2022年4月開設の新しい研究室です.
  • 堆積学,層序学,同位体地球化学の知見・技術を使って堆積物や地層の成因や形成環境を探る研究を主に行います.生態学,環境学など,他の学問領域の課題に手を出すこともあります.

教員

研究テーマ:

  • 湖底,沿岸,深海底での土砂運搬作用,泥や砂の起源と移動経路の推定,堆積物の重金属汚染と環境への影響評価,など
上:野外調査の道具,ハンマーとクリノコンパス.下:質量分析装置による同位体測定.

研究実績

  • 沖縄県西表島に分布する中新統八重山層群西表層の砂岩鉱物組成に基づく供給源推定
  • 斐伊川洪水流の宍道湖底における堆積様式の推定
  • 鳥取砂丘に挟まる最終氷期のローム層の起源の解明
  • 四国海盆の半遠洋性泥質堆積物の起源の解明
  • 仙台平野海浜砂の起源と動態の解明
  • 西南日本の河川泥質堆積物のSr-Nd-Pb同位体比と流域地質との関連の解明
  • 海棲生物のトレーサーとしてのNd同位体比の有効性の検証
浅海底で嵐の時に形成する堆積物に発達する特有の模様,ハンモック状斜交層理.(沖縄県西表島の約2000万年前の砂岩,八重山層群西表層)

メッセージ

 堆積物や,その積み重なりである地層には,過去や現在における,地球表層での出来事,環境変化の痕跡が様々な形で記録されています.齋藤研究室では,堆積物の見た目(粒子の並び方,断面に見られる模様,生物の活動の痕跡など),堆積物の中身(粒子のサイズ,形状,鉱物種など),地層の構造(重なり方や横方向への連続の仕方など)といった堆積学的情報に加え,粒子や付着物の化学組成や各種元素の同位体比といった地球化学的情報をもとに,地球表層における物質循環や環境変動の理解を目的とする研究を行います.
 例えば,堆積物の粒の大きさはそれを運んだ水流の強さを反映した情報となります.地層で,粒の細かい泥の層の中に粗い砂の層が挟まっているのが観察できる場合,普段は流れが弱く,細かい泥しか運ばれない場所に(池や深海底などをイメージしてください),イベント的に,洪水や土石流のような強い流れが流入したことが推測できます.さらに,その砂の層だけに注目し,下から上へと砂粒子のサイズとその変化を調べれば,その流れの強さが時間とともにどのように変化したのか,土砂の濃度はどの程度だったのか,といったことなどが推定できます.流れの速さや方向,土砂濃度は,層の断面や底面に見られる模様からも推測できることがあります.一方,土砂がどこから流れてきたのか,起源を知りたいときには,化学組成や同位体比が役に立ちます.
 齋藤研究室では,こういった知識,技術を身につけながら,各々が興味・関心を持てる研究課題に取り組んでもらいます.堆積物や地層に関連して解明してみたいと思っている具体的なテーマがある人はもちろんですが,漠然と,地層の縞模様に美しさを感じる,砂の動きに惹かれる,気がつくと川や海で水の流れや波を見つめてしまう,穴を掘るのが好き,山歩きが好き,といった人も適性があるかもしれません.気になったら気軽にドアを叩いてみてください.

深海底で発生する希薄な土石流(turbidity current)の堆積物,タービダイト(turbidite).粒の大きさが変動しながらも下から上へ細かくなる(上方細粒化)ことから,この堆積物を運んだ土石流は,最初に到達する先頭部が最も速く,その流速は時間と共に揺らぎながら徐々に低下したことが読み取れます.この土石流が希薄であったことは,中下部,中上部あたりに薄く見られる水平の縞模様(平行葉理)の存在から推測されます.(淡路島の6000~8000万年前の砂岩.和泉層群)

卒業生の研究テーマ

  • 2024年卒業論文:飛松一輝「古流向が示唆する底層流堆積作用の存在:始新統室戸半島層群奈半利川層の例」