(2022)科研成果概要22K12314

科学研究費基盤C(22K12314)は、2022年度から3年間のプロジェクト計画の研究であり、従前の研究18H03344の研究を継承・継続的に研究を進めつつ、範囲を絞った展開研究と位置付けている。当該研究としては、2022年度は初年度であるが、研究の目的、副課題と合わせて、初年度の対外発表等の実績を概説する。

1.研究のねらい

チームスポーツの戦術分析は、その結果としての勝敗に着目して、競争性の観点を中心に様々な研究がなされてきたが、学習支援の観点で取り組まれている研究は多くない。本研究では、チームスポーツにおける個々のスキル学習、特に認知スキルに着目しつつ、それがチームとして機能するための学習支援環境を設計・構築する。そのため、空間認知変換機構、戦術高度化、数理モデルといった三つの副課題観点から研究を進めている。以下では、後述した発表文献毎の成果について、詳細は文献に任せることとして、その概説を行う。

■発表文献毎の成果概要

(PR-1, NR-1) 

1.トラッキング要素技術開発

単一のカメラで撮影したゲーム映像には、多数のプレイヤーが敵味方入り乱れて同時に映り込んでいる。その状況下で、既存のマルチオブジェクトトラッキング技術を適用したマルチプレイヤートラッキングに際しては、バウンディングボックスに基づくトラッキングには、オクルージョンによるトラッキングからの外れ対応やスムージングといった工夫が求められる。また、一般の二階席等からのカメラ映像はコートに対して、斜め上からの撮影を前提とすることになるため、トラッキング処理の後の二次元座標系への変換時には、その補正が求められる。さらには、バスケットボールにおいては高く飛ぶジャンプによる鉛直方向への上下運動が顕著に表れ、それにより座標変換時に大きく位置がずれることになる。そこで、このような幾つかの共通・特殊な課題に対して、技術的な対策処理を導入し、バスケットボールに特化したマルチプレイヤートラッキング技術を開発した。

2.学習支援技術開発

もともと二次元座標データが、高精度な専門のトラッキングツールで抽出されてたとしても、学習支援機能は装備されていない。上記の要素技術として、安価にプレイヤーのトラッキングができたとしても同様である。そこで、二次元座標系での移動データが得られた際には、それを活用した戦術学習の機能およびその実現環境が求められる。そこで、本研究では、既存の戦術自動抽出の研究を元に、今回のトラッキングデータに合わせて基本戦術の抽出機能を一部移植した。これにより、適用戦術に関する設問や予測に関する設問が提供できる環境が整ったことになる。

(PR-2, NR-2)

3.個人の認知スキル学習

チームの戦術実現性を高めるには、そのチームを構成する個々のプレイヤーが、戦術理解したことを前提としても、プレイヤとしての認知スキルを高めねば実現困難になる。また、認知スキルは、チーム戦術のみならず、個人プレイとしても必須であるため、本課題の中で、その注視点に関する研究に取り組んだ。これは、前プロジェクトからの継承・発展課題である。本研究では、対峙する相手プレイヤー一人に対する視点位置の学習だけでなく、マルチプレイヤー環境としては、複眼的な注視対象に注意を払う必要がある。そこで、複合現実環境(MR)を用いて、視線による中心視野だけでなく、ハンドトラッキングを導入して、中心視点に加えて、他の注意点を明示できる環境を構築した。この環境を用いると、エキスパートとノービスの間での、中心視座と周辺視の中にある注意対象の二つの情報を比較することができるようになった。

■Achievemet-Paper List

(査読付:PR)

  1. Kenji Matsuura, Kota Jobe, Hiroki Tanioka, Hironori Takeuchi and Tetsushi Ueta : Performed-Tactics Detection of a Basketball Match using Multi-Object Tracking Technology Applicable for a Movie, Proceedings of SITE2023, US, Mar. 2023.
  2. Kenji Matsuura, Hiroki Tanioka, Stephen Karungaru, Tomohito Wada, Naka Gotoda : Double-sided design for reinforcing private training of basketball with an advanced imagery opponent, IJLTLE, Vol.6, No.1, 2023 (Accepted, InPress).

(査読無:NR)

  1. 条辺 康太, 竹内 寛典, 松浦 健二 : バスケットボールの実映像からのプレイヤトラッキングによる基本戦術理解支援, 教育システム情報学会学生研究発表会, 231-232, 2023年3月.
  2. 山岡 凛, 竹内 寛典, 松浦 健二 : MR環境を活用したバスケットボールの着眼点の改善支援,
    教育システム情報学会学生研究発表会, 229-230, 2023年3月.