科学研究費基盤C(22K12314)によるプロジェクトは、2022年度から3年間のプロジェクト計画で行うものであり、従前の研究18H03344の研究を継承・継続的に研究を進めつつ、範囲を絞った展開研究と位置付けている。当該研究としては、2024年度は研究プロジェクトとしての最終年度となるが、研究の目的、副課題と合わせて、当該年度の対外発表や研究成果等の実績・進捗を概説する。
本研究では、時間・空間を2チーム間で共有しながら、チーム人数等を同条件下でゴール得点を競い合うようなチームスポーツにおける戦術理解を支援するための初期検討を行なっている。戦略は、大局的な観点から、最終的にチームを勝利に導くための方針・計画といえるが、戦術は局所的な観点の下で、状況を具体的に捉えた上での戦い方といえる。
3年間の研究期間を通じて、チームスポーツの戦術理解のためのストーリー性ある研究アプローチをとってきた。単眼カメラあるいは少数カメラ映像を用いたマルチオブジェクトトラッキング技術の応用による時系列座標化の研究を行い、ID更新対策の課題は残るものの、実用に耐えうるに近い精度でのトラッキングを可能とした。また、時系列座標データに対しては、VRシミュレータや2Dシミュレータ化が可能となることから、その俯瞰視を可能とするベースシミュレータ環境上に、戦術に応じた付加情報を加えて理解を促進した。例えば、数理モデルを適用した低リスクパス相手の抽出やそのシュートへの高確率化抽出への応用、さらにはスクリーンプレイ発動理解といったサブ課題へのアプローチを行った。また、視線検知もとりいれ、注視点の熟練者と学習者との差異にフォーカスをあてた視線誘導と、そこから注意点にも着目した付加価値機能設計・実装を、複合現実デバイス上でおこなった。
2024年度は、特に以下の研究成果を発表・公開してきた。
■発表文献毎の研究内容
PR1では、複合現実デバイスを用いて、そのデバイス内にWebVRでのバスケットボールシミュレータを映し、それに対する、視点取得を行う環境を構築した。また、その際、ハンドレイ機能を応用して注意点を別途取得する環境を構築し、注視点・注意点誘導環境を評価した。欠損データの関係から注意点の方は明らかな有効性を示すことはできなかったものの、メタ認知環境の利便性を実現できた。また、注視点の方は有意に効果を測定できた。
PR2では、数理モデルを用いたWebVR上のバスケットボールシミュレータを様々応用する環境を構築した。特に低リスク(パスカットされにくい等のリスク低減)パス相手の抽出や、その中でも得点につながりやすい相手に絞り込む機能を実現し、評価を行った。相対的にある程度の優位性は見られ、システムの有用性として示唆された。
PR3では、人間の平面・空間認知変換を促進する環境として、二種類のインタフェースを構築し、その評価を行った。具体的には同時並行描画と選択単一描画といえるが、いずれも即時性・正確性に寄与しながらも、選択単一描画インタフェースの方が、即時的な理解には寄与しやすいことが分かった。
■Achievemet-Paper List
(査読付:PR)
- Shota Takagi, Kenji Matsuura, Hironori Takeuchi : Support for learning gaze-trend in basketball using MR environment, Proceedings of IMCOM, 6pgs, Bangkok, Thailand(&Online), Jan. 2025.
- Taketo Shibasaki, Kenji Matsuura, Hironori Takeuchi and Tetsushi Ueta : Visualization for easier recognition of low-risk and successful passes in a Basketball match, IIAI Letters on Informatics and Interdisciplinary Research, Vol.5, pp. 1-8, Takamatsu, Jul. 2024.
- Hironori Takeuchi, Kenji Matsuura, Tetsushi Ueta and Tomohito Wada : Development of a Support System for Recalling 3D Vision from a 2D Plane, Journal of Educational Multimedia and Hypermedia, Vol.32, No.1, pp. 5-34, 2025.
(査読無:NR)
- 柴崎 剛人, 松浦 健二, 竹内 寛典, 上田 哲史 : バスケットボール初学者への低リスクパス学習からの展開考察, 教育システム情報学会2024年全国大会講演論文集, 31-32, 2024年8月.
- 高木 翔大, 松浦 健二, 竹内 寛典 : MRデバイスを活用したバスケットボールの注視動向の学習支援, 教育システム情報学会2024年全国大会講演論文集, 65-66, 2024年8月.
- 柴崎 剛人, 松浦 健二, 竹内 寛典:パス可能領域の可視化によるバスケットボール初学者の状況判断力向上支援,情報処理学会第87回全国大会講演論文集,pp.265-266,2025年3月.
- 高木 翔大, 松浦 健二, 竹内 寛典:バスケットボール初学者を対象とした注視・注意技能向上のためのMR 援用メタ認知支援システム,情報処理学会第87回全国大会講演論文集,pp. 267-268,2025年3月.
- 村田一馬, 柴崎 剛人, 松浦 健二, 竹内 寛典:スペーシングに基づくシュート判断の学習支援環境, 教育システム情報学会学生研究発表会(四国),pp. 219-220, 2025年3月.(優秀賞)
- 根木聖, 竹内 寛典, 松浦 健二:バスケットボールにおけるスクリーンプレイ発動のための試行錯誤環境, 教育システム情報学会学生研究発表会(四国),pp.217-218, 2025年3月.