核磁気共鳴(NMR)/電子スピン共鳴(ESR)装置
本実験室には下の写真で見られる実験装置があります。手前(写真の右側)に見える2つの円筒形をしているものが電磁石です。この中に巻かれているコイルに電流を流すことにより、最大1.3テスラの均一な磁場を発生させることができます。
物質中に存在する原子核は、この磁場に比例した周波数の電磁波のエネルギーを吸収し、これを核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、略してNMR)と呼んでいます。左奥に見える装置により、電磁波を発生させエネルギーの吸収の様子を観察することができます。
NMRは今日の科学・技術に大きく貢献しており、例えば医療の分野では磁気共鳴の原理を使って人体の断層写真を撮影することまで可能です。また、化学の分野では物質の構造を決定するのになくてはならない装置です。
私たちは物理の分野の中でも物質の性質に興味があります。これを物性物理と言いますが、物質の結晶構造や電子の振る舞いが物の性質を特徴づけています。前者を研究するのに有効な実験手段がX線回折実験で、後者を研究する手段の一つにNMRがあげられます。
抵抗測定装置とクライオスタット(冷凍機)
四端子法
四端子法は抵抗率測定をする上で最も一般的な測定方法です.この方法を用いると試料本来の抵抗を測定することができます.
上の原理を用いて作製したのが下の写真の抵抗測定装置です.右に見えるのがクライオスタット(冷却装置)です.ガラス製デュワー瓶(魔法瓶)の二重構造からなり、中に試料を入れて、液体窒素や液体ヘリウムを用いて冷却します.そして、そのデータを左に見えるパソコンに取り込み、測定状況をリアルタイムで表示させます.
粉末X線回折装置(XRD)
X線についての基本
X線は光と同じく電磁波で、波長領域が100~0.1オングストロームのものをいいます。X線の発生方法としては普通用いられるのは、高電圧で熱電子を加速して金属ターゲットに衝突する方法です。これによって生じるX線は、原子の内殻電子の遷移による特性X線と電子の制動放射による連続(白色)X線からなります。
このうち、特性X線を実験に利用するわけですが、以下のメカニズムによって生ずることが知られています。原子は原子核とそれをとりまいたK殻、L殻、M殻などの電子からなっています。高速の電子を物質内の原子に衝突させると、殻に近い内側の殻の電子が叩き出されて空孔が生じます。この空孔に外側の電子が落ち込むことによりX線が放射されるのです。表1にX線回折でよく使われる陽極金属の特性X線を示します。
ふつうKβ線はフィルターを用いて除いてしまいます。しかし、Kα1線とKα2線は高分解能の結晶分光器によらなければ、分離することができず、実用上、いっしょに用いることが多く、この場合、Kα線の波長としては、加重平均
λKα =(2λKα1 + λKα2)/ 3
を用います。
また最近は、シンクロトロン放射が強力なX線源として注目をあびています。これは電子の進行方向を変えると加速度が生じ、電磁波を放出することを利用したものでその波長領域はX線領域から赤外線領域まで及ぶ連続光で、また強度が極めて強いのが特徴です。 日本の放射光施設としては 高エネルギー物理学研究所や SPring-8 などがあります。