平田研究室は2020年4月にコロナ禍で発足しました。環境微生物のタンパク質と核酸の機能について研究しています。また、未知の機能を持った環境微生物を発見し、その機能、生理・生態を解明して、環境浄化・修復や医薬食品開発に応用します。
研究内容
生命の基本単位は細胞です。細胞が活動を維持し増殖するためには、エネルギーの獲得と細胞構成元素の摂取が必要です。そのため、細胞内では生体触媒である「酵素」を中心に化学反応が常に起こっています。研究室では主に酵素の分子構造「かたち」を決定することで、その機能「働き」を理解する研究を行っています。生化学の教科書(ヴォート基礎生化学など)に頻繁に出てくる酵素分子構造の絵のおかげで、酵素の化学反応が容易に理解できます。
酵素の分子構造の「かたち」を決定する手段としてX線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡単粒子解析をしています。データ収集は大型放射光施設SPring-8(兵庫県)あるいはPF(茨城県)の装置を使用させていただいております。年に数回、データ測定のためにSPring-8とPFに出張しています。データ測定には連続2日間かかる場合もあります(合宿に近いかも)。
決定した酵素分子の構造「かたち」を基に、どのアミノ酸残基が触媒反応や基質認識といった「働き」に重要であるか調べるため、生化学解析を行い、酵素反応機構を解明します(下図)。つまり、酵素中のどのアミノ酸残基を使って、相手である基質を捕まえ有機化学反応を行い生産物に変換するかを可視化しています。
大豆βアミラーゼ(至適pH 酸性)と微生物βアミラーゼ(至適pH 中性)のX線結晶構造を比較して、触媒残基と水素結合するアミノ酸の違いが両酵素の至適pHの違いであることを明らかにしました。
主に超好熱菌アーキア由来の酵素をターゲットに研究しています。超好熱菌アーキアは、原始生命体に近いのではと議論されており、生命活動に重要な酵素研究は、初期生命進化の理解の一助になります。また、アーキアの遺伝情報を伝える仕組みは、ヒトをはじめとする真核生物に似ており、最近では、アーキアの母体から真核生物に進化したのではという議論が活発化しています。現在、超好熱菌アーキアが高温下で生育するのに必須な酵素を中心に研究しています。
自然循環型農耕システムにおける微生物の役割を研究しています。徳島県には世界農業遺産に指定された地域があり、そこでは古くから継承された自然循環型農耕システムによって、急傾斜地で農作物を栽培しています。物質循環に関わる環境微生物がどのように自然循環型農耕システムに影響するのか、地球科学講座の先生達と協力して研究しています。環境保全型農業の普及と微生物を介した環境負荷低減型土壌改良剤などの開発を目指しています。